2013-04-29

130427-29 白馬岳主稜


先を行くまっちゃん。ずっと右上が山頂。



130427
17:00 白馬村おおしも食堂
まっちゃんと2人で早めの夕食をとりながらテレビを見ていると
NHKのニュースで白馬大雪渓での雪崩事故が流される。
もともと下降ルートは、山頂の山小屋で確認して決めることにしていたが、
これで大雪渓の下降は、なしになった。
猿倉山荘前の駐車場に着くとテレビ局の中継車が駐まっている。
猿倉山荘に登山計画書を提出し、様子を聞いてみる。
明日は、ここから入ること自体制限されるかもとのこと。

まっちゃんと相談し、行くとしても下降は、栂池か白馬鑓。
朝ダメならダメで考えようとなった。
駐車場にて就寝。

猿倉山荘の報道陣
















130428
5:36
猿倉山荘前には、すでに取材陣が詰めかけている。
取材されるのを避けて猿倉山荘の裏手から出発する。

白馬尻までの間に撤退するパーティーとすれ違う。
白馬尻は、強風とのこと。

白馬尻から大雪渓
7:24 白馬尻
白馬尻は、風の通り道なのでブリザードに近い。
幕営しているテントは見えない。
前に4人パーティーが白馬尻から主稜の斜面に取り付いている。
6人パーティーが斜面下部で停滞している。
6人パーティーとすれ違ったときには、下降し始めてきた。
これで撤退2パーティー。

白馬尻から主稜に取り付いた先行パーティー


長岡ガイドがコンテで行く。

















8:52
Ⅷ峰の半分ほど登ったところで前の4人パーティーに近づいたところ、
聞いたことのある声。
ゲゲッ。世間は狭い。
長岡ガイドだった。
「いやー、これでコラボして登れるぞ。」と言われる。
ここまでずっとラッセルした踏み跡を使わせてもらったし、
よく知ってる関係なので断れるはずもなく一列縦隊で交替ラッセル。
ところが、長岡氏「俺たちⅧ峰の先までで帰る。次の予定入ってるし。」ですと
そこから先は、2人でラッセルを続けるのかと思うとぞっとする。
まだ最初のピークのⅧ峰にも届いてないのに膝ラッセルで体力をどんだけ使うのかと考えると
先を見てだめそうなら長岡ガイドパーティーと同じく途中敗退も頭によぎる。

Ⅷ峰を過ぎる前で単独者に抜かれ、

Ⅷ峰を過ぎたあたりでまた単独者に抜かれる。


振り返ると稜線らしくなってくる。













上から単独その1、単独その2、下降してくる長岡ガイドの教え子2名、長岡ガイドパーティー4名




























10:25
上からは、2名のパーティーが、稜線を下りてくる。
どうやら敗退してきたようだ。
これで敗退3パーティー。
この2人とすれ違うときに長岡ガイドが、自分の教え子と言っていた。
偶然なんだかどれだけ顔が広い人なんだか。
長岡ガイドのパーティーは、ここまでとなる。
長岡ガイドのパーティーは、最初から途中までと決めているので敗退ではないが、途中退却4パーティー目。
天気は、どんどん良くなり風も収まり進むことにする。

しばらくして長野県警ヘリが大雪渓下部でホバーリングして引き上げているのが見下ろせた。
遭難者の収容か。


大雪渓のデブリ


























Ⅴ峰のあたりで今度は、単独行の一人が降りてくる。
雪が安定していないので撤退することにしたとのこと。
これで撤退5パーティー。

天候はどんどん良くなっているのだが、
彼の言うとおり足元の状況が悪い。
春のしまった雪ならもっと快適なはずだ。
我々も歩いていて膝下ぐらいまで新しい柔らかい雪だが、その下は、ザラメ状の層になっていることがわかる。
これは、新雪が弱層の上に積もっていることを意味する。
主稜は、基本稜線上のナイフエッジであり
雪崩が発生するとしても自分たちの上からはこないし、
急斜面では、斜度が雪崩の発生しやすい角度を超えているので
雪崩れるような雪は、そもそも斜面に残りにくく確率は、低い。
しかし、自分たちが乗っている雪面ごと雪崩れるかもしれないのだ。
昨日の大雪渓の雪崩も新雪が弱層の上に降って起きている。

新雪の下のザラメの層までクランポンの爪が届くように踏みしめる。
これ以上柔らかい層が厚く下の固い層をとらえられないようだと我々も撤退を考えなければならない。

登山をする限りは、たとえ高尾山のハイキングでもリスクゼロを求めることはできない。
矛盾するようだが、受け入れるリスクが、自分達にコントロールできるかどうかの判断だ。
それも100パーセントのコントロールは、できない。
正解は、結果かも知れないが、敗退しようと成功しようと常に判断の基準は、生きて帰ってくることだ。
命を賭けるまでの価値はないのだから。


山頂が見えてくる。風も収まってきた。

振り返ると高度感も出てきた。

我々の前には、もう一人の単独行者のみとなった。
ゴールデンウィークの2日目というのに主稜の上部にいるのは、3人だけ。
ここから先の斜面は、前を行く単独行者の動きを確認しながらとなる。
それにしても我々の前には、この人の踏み跡しかないのだからこの人はひとりでずっとラッセルを続けているのだ。
しかも我々との距離が開いていく。
トレースが付いてありがたいというか、すごい強さに驚く。

主稜は、ずっとナイフエッジと急斜面が続く。
しかも右も左も落ちると下まで引っかかりがない斜面で
右は白馬沢に、左は大雪渓まで落ちれば、1000メートル位滑落しそうである。


ナイフエッジでロープを出す。

12:10
ほぼ、まっちゃんが先を行く。
途中、まっちゃんが、「このナイフエッジやばい。ロープだそう。」となり、
スタンディングでアックスビレイをとる。
まっちゃんが進みだし、「あれっ、ロープ出さなくてもいいみたい。」とは言うものの、
「いやっ、俺が怖いからロープつかって。」と返事する。
正直怖い。
一歩転んだだけでずーっと下まで落ちることを意識すると平常心で歩くことは、難しい。
一歩一歩バランスをとりながらとなる。


上ってきた稜線。美しい。けどしんどかった。


最後の雪壁の手前のコルで休みを取る。
下を見ると4人ぐらいのパーティーが登ってくる。
自分たちとは、1時間30分位の時間の差だろう。



最後の雪壁に取り付く。

最後の雪壁をロープ無しで登ってしまうまっちゃん。
15:30
最後の雪壁となる。
まっちゃんにビレイポイントを探すため、良さそうなところで止まってくれと声をかける。
まっちゃんかまわず、登り続ける。
確かに下から見るとこれまで登ってきた急斜面とさほど変わらない。
ロープなしでも十分にいけそうだ。
まっちゃんに続く。
雪壁上部になるとこれまでの急斜面とは違う。
強風が吹き付け柔らかな新雪はない。
表面が硬化したモナカ状になっている。
アックスを打ち込むと四方30cm位にヒビが入る。
これでは、体をまかすことはできないのでモナカの表面を取り除くが、
次の層は、やわらかい雪だ。
手を差し込んでホールドにするが、しっかりはしていない。

まっちゃんは、どんどん登り上げて結局ロープ無しで最後のキノコも突破してしまう。
やったー。さすが、まっちゃん。ではなくて
こっちは、最後のキノコの垂直部でなかなか勇気が出なかったので
まっちゃんにロープを出してもらえる。
いっさいためらわず泣きをいれる
「まっちゃ~ん。ロープ出して~。」
しばらくすると上から環付カラビナが付いたロープがするすると
地獄の血の池で蜘蛛の糸にしがみつくカンダタの気持ちがよーくわかる。
ロープの安心感のおかげでテンションをかけずに抜けることができた。

フリークライミングのグレードもアイスクライミングのリードも僕の方がぜんぜん上なのに今回は、まったく逆。
ここのところフリーのボルトルートが中心になった僕にとってこういったアルパインの不確実性に対する精神的な許容度は、相対的に落ちているのだ。

なんとも頼もしいまっちゃんに感謝。


まったく賑わってない白馬岳山頂

















16:00
山頂に這いつくばるように出る。超かっこわるい。
ちょうど2人の登山者が小蓮華尾根から登り上げてきたところだった。
何事もなかったようにすっくと立ち上がるオレ。
山頂は、強風が吹き付けているので写真を撮りさっさと白馬山荘に降りる。

白馬山荘で受付。
ルートを聞かれる。
猿倉から主稜と答えると下降はと聞かれる。
大雪渓には入りたくないので白馬鑓か栂池と答える。
白馬鑓は、やめた方がいいとのことで明日は、栂池に降りることにする。
特別料金でもないのに6畳の個室に案内された。
宿泊者を食事の時に数えてみると14人。
静かな夕食となった。

さすがに疲れた。
標高差1700mでラッセルあり、ツボ足あり、不安定なナイフエッジあり、4足歩行ありでヘトヘトだった。
雪崩リスクの把握と行動選択について貴重な経験となり神経をすり減らした。
許容量ののりしろが少ない山行は必ずしも勧められるものではないが、
それをすることにより自分を高められるのも事実。

18時に食事をとりテレビの天気予報を見て19時には、寝てしまった。


130429
明け方から風が強くなる。
6時に朝食をとったが、降りるだけなので急ぐことはない。
しばらく様子を見ることにする。

7:44
風は、おさまらないが、視界はよいので出発することにする。



小蓮華尾根から主稜中間部
8:30
山頂を三国境に降る途中で主稜が見えると
最後の雪壁近くに数人がいる。
この時間であそこということは、昨日後ろに見えていたパーティーのようだ。
自分たちは、登山道なのに強風でマイケルジャクソンの前傾ダンス。
ナイフエッジでテントを背負って飛ばされそうになりながら進むのを想像すると恐ろしくなる。
昨日は、天候に恵まれて本当によかった。

帰りは、下るだけだから楽々と思っていたらかなりしんどかったが、
遠回りしながら主稜の稜線や白馬鑓、八方尾根までが美しかった。


栂池からは、真っ正面に主稜の稜線が見えた。

11:30
栂池スキー場ロープウェイ乗り場に着く。
ロープウェイとゴンドラ料金で1750円
栂池から猿倉までタクシー代5300円
身の安全のためには、納得の費用だ。

猿倉に着くと長野県警の車や報道陣が、詰めている。
余計なことを聞かれるのがいやなのでそそくさと荷物を積んで走り去る。

3 件のコメント:

  1. すばらしい!  こっちは猿倉で早々に退却決定、同じ主稜でも赤岳へ転進しちゃいました。  山でお会いできたら、宜しくお願いいたします。

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  2. OPANDさんありがとうございます。
    話変わりますが、
    西上州神津牧場インディアンサマー広場には
    毎年行ってますので
    次回行くときには、
    降り口に赤布でも結んでおきます。

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  3. おお、神津牧場敗退も見られてしまいましたか、お恥ずかしい(/(エ)\)。 では次回赤布頼みで行ってみます <(_ _)>

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